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 山梨県内の地域課題である「空き家対策」と「商店街活性化」の両面について、解決に導いた事例のひとつに、リノベーションで衰退に近かった商店街の再生に取り組んだという韮崎市の例があります。
 この『韮崎のリノベーションまちづくり』の当該地域への現地視察が【地域課題解決実践プログラム】の課外実習として、令和7年7月9日(水)に実施されました。

 今回の訪問先は、韮崎中心街のランドマークでありリノベーションの事業拠点でもある「アメリカヤ」ビルです。アメリカヤは高度経済成長期に建てられた築50年以上の古い物件でした。昭和から平成にかけて賑わいを見せていたアメリカヤの閉鎖にともない、周囲の商店街は衰退に近い状態が続いていたといいます。そんなアメリカヤと周辺商店街がいかにして活気を取り戻していったのか、リノベーションを手掛けたイロハクラフト建築事務所の千葉社長からお話を聞かせていただきました。長らく空ビルとなっていたアメリカヤの復活から始まった商店街再生の物語は、まちづくりに関心を寄せていた学生たちの気持ちに強く響いた様子でした。
 講話後は活性化された商店街を千葉社長の案内で視察することに。実際にまち歩きをすることで、リノベーションで甦った店舗の店主さんからも生の声を聴くことができ、事例調査の現場感を実感することができました。
 今回の事例調査の学びについては、各々の振り返りレポートで発表の予定です。

 令和7年6月11日(水)、SPARC教育プログラム合同の『講演会&ワークショップ:ものづくりを通した長崎・五島の魅力発信』が甲府東キャンパスで開催されました。

 4回目となる今回のワークショップでは、長崎県の五島列島でクラフトジンの製造業を営む『五島つばき蒸留所』代表取締役・門田クニヒコ氏を講師としてお迎えしました。
 門田氏は、大手飲料メーカーでビール等の商品開発業務に長らく携わった後、早期退職し、同僚2人と長崎県五島市(福江島)に移住する形で2022年にクラフトジンの蒸溜所を立ち上げます。この小さな酒造会社が起こした奇跡的な地域活性事業の「ものがたり」が本ワークショップのテーマとなりました。

 講話では「風土と人がつくりだすもの」と題し、大手飲料メーカーでの酒類開発の経験から蒸留所の立ち上げに至った経緯と、五島の歴史と文化を持ち合わせた特産物である「椿」の実をジンのボタニカルとして活用した商品開発の苦労話に加え、商品にいかに物語性を持たせるかの重要性について、また、この起業と地域性を活かした「ものづくり」によって、結果的に地域を巻き込み地域活性の波及効果をもたらすことになった背景などをお話しいただきました。講話後には学生から多くの質問が投げかけられ、今回のテーマへの関心度の高さがうかがえました。

 続いて「ものづくりを通した山梨の魅力発信」をテーマに、地元山梨に根ざした商品を考案するワークショップが行われました。5~6つのグループに分かれ、講話内容をヒントとして山梨の魅力探索、山梨の魅力を表現する新事業の考案、​発信方法の検討​、まとめ(模造紙にイラストで表現)の流れでワーキングを進めていきます。最終的に作成したイラスト資料を使ってグループリーダーがプレゼンを行い、質疑応答の後、それぞれの作品に対するコメントを門田氏からいただきました。学生の提案商品には、物語性を意識したものが多くみられ、講話内容を深く理解し発想に生かせた結果であると感じられました。
 すべてのグループ発表が終わると、学生同士で良いと思った作品に投票をし、優秀賞を決めることに。最優秀賞には『五島つばき蒸留所』のオリジナルTシャツが贈呈されました。

 参加学生からは、「起業した経緯や、一つの商品が生まれるプロセスを知る機会になり、その切り口や考え方にとても感心した」といった感想が聞かれ、心に響く有益な時間となったようでした。
 

また、今回は山梨県立大学からもSPARC教育プログラム受講生の数名の参加があり、共同で作業をすることで親交を深める良い機会となりました。

 【地域課題解決実践プログラム】では、新年度よりSPARC教育プログラムの専門科目である『地域PBL』科目の演習授業が始動しています。
 初回授業では『地域PBL』とはどんな科目なのかについてと、今後の授業内容の確認を行いました。前期授業では主に、現地に足を運んで自分の目で確かめることで地域課題に対する理解を深め、その上で魅力的な解決事例を探り当てることを目指します。
 4月30日(水)の2回目の授業では、現地調査の前段階として、地域課題の本質を理解するためKJ法を用いたワークショップが開かれました。
 KJ法は本質的な問題解決策の発見やアイデアを生み出すことができる手法とされており、グループ作業でアイデアを出し合い、それぞれ頭の中を整理するといった作業の体得が期待されます。
 学生たちにとっては初めてのKJ法による授業でしたが、それぞれが意見を出し合い、ファシリテーター(場の進行と意見調整役)となった学生を補助し、意見を上手くまとめる様子が見られました。ファシリテーターの役割をこなすことは実践現場でも大いに役に立つ能力であるため、今後もKJ法によるディスカッションなどの機会を増やし、経験を積んでもらうことを目標としています。

 令和7年4月2日(水)、『SPARCロールモデル講演会&ワークショップ:学修プランを作成・運用しよう』が甲府東キャンパスで開催されました。
 今回は、本校の卒業生でもあり、現在、大手シンクタンクで安全事業研究に携わる沓川一也氏を講師に招き、学生自身の将来を見据えた「学修プラン」についてのワーキングが行われました。

 説明会では最初に「学修プラン」作成の意図について、このプランが自分の“やりたいこと”や“なりたい自分”を実現するための重要なステップとなること、プランを通して自分自身の目標を明確にし、今後の学びに活かされるものであることが説明されました。また、運用について、2年次前期から3年次後期までに渡って行い、期間中に目標や希望を少しずつ記入し、定期的に振り返りながら活用していくことで、より明確な目標設定ができるようになるといったことも伝えられました。これから作成する「学修プラン」は、学生と教員間で内容が共有され、適切な指導やサポートを行うための面談などで活用されることが示されています。

 そこで今回のワークショップでは、自身のプランを作成するための予行演習として、グループに分かれ、架空の学生を対象にした「学修プラン」の作成を行いました。
 公務員や金融機関、NPO法人など志望する将来像を想定した架空の学生の中から1名を選び、その人物に適した「学修プラン」を協働で作成します。選んだ人物の卒業後の進路をふまえ、大学で習得すべきスキルを具体化し、4年次までの開講科目を確認、今期に重視すべき履修科目を選定しながらプランを考えることが必要となります。いわゆるキャリアコンサルタントになったつもりのプランづくりを行いました。

 以上の内容についてはTeamsチャンネルを活用し、パワーポイントファイルを共同編集することで検討結果を整理し、結論を簡潔にまとめたスライドを作成、視覚的にもわかりやすく伝える工夫を凝らし、グループ代表を立てて発表を行いました。
 架空の学生のものとはいえ、実際の履修科目で練られたプランは、どれも将来性を意図したスキル修得に根ざした一貫性のある構成となっていました。発表後にはプランに対する質疑応答や意見交換、議論が交わされ、先生方からの講評も聞かれました。

 学生たちからは、「他者のプランを練るのは難しかったが、客観的に履修科目を考えることができた」、「自分自身が何をしたいのか、どのように学びを深めたいかを他人のプランを通して考えることができ、新鮮な内容だった」といった感想があがり、他者の問題を自分事として捉える課題解決の手法をひとつ学んだとともに、別の学部生の履修プランの視点にも刺激を受け、文理問わず横断型の学修を進める必要性も強く感じ取れたようでした。

 令和7年3月3日(月)~4日(火)、SPARC教育プログラムについてより詳しい学修内容を理解するための『SPARC 3プログラム合同合宿』が行われました。
 本合宿は、地域産業を支える自治体および企業施設を1泊2日の行程で巡るもので、プログラムの枠を超えて多くの人たちと交流を深め、広く社会を俯瞰で捉えることを主な目的としています。

 1日目、最初の視察先は「富士山科学研究所」でした。当日はあいにくの空模様で、富士山の雄姿を見ることは叶いませんでしたが、研究所員からの講習を受け、富士山の歴史から地質や植生といった自然環境の実態、噴火による火山防災に至るまで、さまざまな特性について時間をかけて見聞を広げました。その後、宿泊先である「富士研修所」へ移動。夕食を兼ねた懇親会では趣向を凝らしたアイスブレイクが実施され、学生と教員、学生同士、それぞれ親睦が深まった様子でした。

 2日目は、JR東海と山梨県知事政策局(リニア・次世代交通推進グループ)の協力のもと、「リニア中央新幹線」の釜無川橋梁新設工事現場を見学します。リニアの構造的な話から地形に左右される工事工程や技術について、さらにはリニア開通後の山梨の将来的なビジョンに至る概要説明がされた後、実際に南アルプス市で建設途中の現場に入りました。高架橋上の工事作業の様子、そこから広がる山々や街並みを目の当たりにし、それぞれの胸に未来の山梨への思いを新たに刻みました。

 続いて甲府市の米倉山へ移動し、山梨県企業局(新エネルギーシステム推進課)の協力をいただき、「米倉山次世代エネルギーシステム研究開発ビレッジ(Nesrad)」内の「太陽光発電所」と「水素技術センター」を巡察します。事前に次世代エネルギーPR施設「きらっと」にて概要説明と質疑応答が行われ、太陽光と水素からエネルギーを精製する現場を順に見学しながら、山梨のエネルギー事業の歴史とカーボンニュートラル推進事業、未来へ向けた再生可能エネルギーへのさまざまな取り組みについて学びました。

 当初の雨が雪に変わるなど、悪天候の中で以上の1泊2日の行程が駆け足で実行されましたが、何事もなく全員無事に帰還することができました。学生からは「短いなかでも山梨の自然や事業について知ることができた。今後のプログラム活動において、山梨に関する情報を得た上で取り組んでいく必要性を強く感じた」といった感想が聞かれ、中身の濃い充実した合宿となりました。

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