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2020年11月17日
生命工学科大山拓次准教授らの研究グループの脂質代謝に関わるタンパク質の研究が国際学術誌に掲載されました

 

 

   生命工学科大山拓次准教授と昭和薬科大学の共同研究チームが5年にわたって実施してきた脂質代謝に関わるタンパク質PPARαに関する研究が国際学術誌iScienceに掲載されました。高脂血症治療薬として用いられるフィブラート系薬は標的タンパク質不明のまま1960~1980年代にかけて開発されました。その後、脂質代謝に重要な主要転写因子・核内受容体PPAR (Peroxisome Proliferator-Activated Receptor)-αがターゲットであることが分かり、2001年に別化合物との複合体として初めてPPARα(リガンド結合ドメイン:LBD)の結晶構造が報告され、リガンド結合に伴うPPARα活性化の基本メカニズムが明らかとなりました。しかし、PPARαは全長はもちろんLBDのみでも結晶化が特に難しく、これまで21種類の結晶構造(21種類の化合物との複合体、そのうち2種類は大山准教授のグループ)しか報告されておらず、その中にフィブラートは含まれていません。つまり、全世界で何千万人の高脂血症患者が服用してきたフィブラート系薬の結合状態は未解明のままでした。

   そこで大山准教授は、昭和薬科大学との共同研究により、臨床で使用される6種のフィブラート系薬や内因性活性化リガンドとして働きうる内在脂肪酸などがPPARαLBDに結合している良質の結晶を、オーソドックスな共結晶法を始めとして、浸漬法(Soaking)、シーディング法(Seeding)、脱脂法(delipidation)など様々な手法を駆使して作成し、過去の全報告数を上回る34種の結晶構造(別手法により決定した同一構造の重複を一部含む)を、かつてない高解像度のX線構造解析にて一度に明らかにしました。ボランティア学生を対象とした採血検査などの生化学解析も行い、主要内在脂肪酸(パルミチン酸とステアリン酸)が天然リガンドとなることを示しました。現在PPARファミリー(α、γ、δ)は代謝関連疾患の創薬標的として注目されており、本研究の成果は今後大きな波及効果を生むと期待されます。

   この研究成果は原著論文として国際学術誌iScienceに11月20日付で掲載されます。電子版は既に公開されていますので、詳しくは学術誌ウェブページをご参照下さい。
DOI: https://doi.org/10.1016/j.isci.2020.101727

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