【研究テーマ】地域の自然資源を有効利用した望ましい経済発展

山梨大学 生命環境学部 地域社会システム学科
教授 渡邊 幹彦
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環境はいくらか - 生態系と生物資源の経済的価値
教授 渡邊 幹彦


環境が保全されるか、あるいは、破壊されるかは、環境と人間の経済活動の関係で変化します。好むと好まざるとにかかわらず、人間社会は、経済的価値があるものを有効に使い、そうでないものを、ないがしろにする傾向にあります。これまで発生した環境問題は、環境にあまり「価値がない」と考えた経済活動が引き起こした結果であると解釈することができます。

一方、昨今、この認識が改められ、環境には「価値」が、あるいは「経済的価値」があると考えられるようになりました。さらには、これらの経済的価値を計測する経済的手法が発達し、具体的な経済価値の金額が示されるようになりました。例えば、昨今、多くの自治体が、森林環境税を導入しています。
これは、森林という生態系や樹木という生物資源には、水源涵養機能(雨水を保持してゆっくり水を下流に出したり、浄化したりする機能)があり、その機能は、経済的価値を有すると考えられるようになったからです。

左の写真は、ベトナムのホーチミン郊外にあるキャン・ギャオ(Can Gio)という地区のマングローブ林です。このキャン・ギャオ地区のマングローブは、ホーチミン市民によって、「ホーチミンの肺」と認識され、沿岸の魚類の生息地になったり、レジャーの対象となったり、防災林として津波や強風を防いだりします。しかしながら、温暖化の影響やエビの養殖地などにより、沿岸部が侵食されたり、林地とのものが減少したりしています。このような侵食や林地の減少を防ぐために、写真の右に示されたような環境保全活動が必要です。
左表に示された数値は、コンジョイント分析というアンケートによる手法を用いて、このマングローブ林がどのような経済的価値を持つのかについて、ホーチミン市にて、実際に調査を行った結果です。アンケートは市内の大学院生とキャン・ギャオを訪れた観光客に対して実施しました。キャン・ギャオに必要なそれぞれの環境保全活動に対して、アンケートの回答者が支払ってもいいと考えている金額(支払意志額)が、各保全活動とそれに対応する環境の経済的価値であると言えます。コンジョイント分析では、アンケートの回答を統計的に処理して、表中の支払意志額を算出します。この結果から、やはり、災害防止の経済的価値が高くなっているのがわかります。また、温暖化の防止への支払意志額が、同じように高くなっています。ベトナムの一人当たり所得が、日本円に換算して、年間約10 万円であることを考えると、環境の価値が高いことがわかります。

このような研究が、現在盛んに行われており、この経済価値の額が、開発や環境政策の判断に利用されています。

本研究の出所:Watanabe, M., Vo, T. H, and Yazid (2012) Economic Evaluation on Multiple-Benefits of Mangrove Forests inVietnam - Conjoint Analysis by Attributes of Climate Change Adaptation, Biodiversity Conservation, and Disaster Prevention, International Workshop on Theoretical and Empirical Approaches for Understanding Adaptation to Climate Change, 21st–22nd July 2012, Sophia University, Tokyo

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