【研究テーマ】科学・技術は社会とどう関わってきたのか.科学・技術の歴史分析

山梨大学 生命環境学部 地域社会システム学科
准教授 高橋 智子
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歴史に見る科学・技術と社会
 
地域社会システム学科 准教授 高橋智子
 
歴史センスを磨こう!
 地上に現れたヒトと呼ばれる動物たちが、声によってコミュニケーションをとるようになったのは25万年以上も昔のこと、そして文字を使ってその歩みを記録しはじめたのは紀元前3500年頃だと考えられています。人類は、この長い歴史のなかで、自然から学び、自然を活用する技を身に着け、集団となって逞しく生き抜いてきたわけです。
自然と人類との明日の関係を見極めるために、日常の時計を捨てて、せめて50年という時の物差しで考えてみてはいかがでしょうか。個人的には、人生80年といわれ、明日の生活が気になりますが、そこはぐっと押さえて、「賢者は歴史に学び、遇者は経験に学ぶ」を胸に、人類のこれからを考えて見ませんか。
 
宇宙旅行ブームはやってくるのか?
人類が初めて宇宙に飛び立ってからおよそ半世紀がたち、だれもが宇宙から見た地球の姿を当たり前のように眺める時代です。地上約400㎞の上空に建設された国際宇宙ステーション(ISS)には、今も6人のクルーが長期滞在を続けています。ISSまではソユーズ宇宙船で3日の道のり。日本の古川聡飛行士は、2011年11月に、およそ5か月半の滞在を終えて無事に帰還しました。2008年までに163人がISSに滞在経験をもち、日本人の宇宙飛行経験者も8人を数えるまでになっています。
 ところで、ライト兄弟が世界初の動力飛行に成功したのは1903年。それから60年がたった昭和40年代、「ジャルパック・ヨーロッパ16日間の旅」が発売され、年間20万人の日本人が海外に出かける海外旅行ブームが巻き起こりました。今では毎年1千万人以上の日本人が海外に出かけ、大学の卒業旅行でも海外旅行は人気です。
 21世紀中に、だれもが宇宙旅行をする時代が訪れると思いますか。あなたは月に行きたいですか。
 
 ゼネラリストとスペシャリスト
 Scientist(自然科学者)という言葉は1830年代にイギリスの哲学者ヒューエルによって作られました。この頃から、自然科学の対象と方法が明確になり、独自の社会的役割を獲得した科学者が、スペシャリストとして活躍をはじめます。物理学者のトーマス・ヤングはロンドンスモッグの問題に、マイケル・ファラデーはテムズ川の浄化問題に、ガウスは電気通信システムの問題にと、それぞれが社会的な問題の解決に取り組みました。
 19世紀を通じて自然科学研究は、さらに数学・物理学・化学・生物学・地学と専門分化を進行させ、科学者さえ専門外の知識は理解できないほどに細分化されていきます。実際の自然は、学問分野のようにバラバラの存在ではあり得ず、複雑な連関と巧みなバランスをもつ統一した存在です。
 地球規模で自然環境問題の解決を迫られている21世紀、地球の処方箋を書くためには、細分化された学問を改めて横断的に眺め、スペシャリストを組織して問題解決へと導くような、ゼネラリストの登場が望まれます。
スペシャリストとゼネラリスト、あなたはどちらを目指しますか。
 
ナビゲーション技術の源流を探る
 かつて、陸の見えない洋上を渡る船や航空機は、太陽や星の位置を測定し、そこから自分の位置や進行方向を計算で求めていました。天文航法と呼ばれるこの方法を使うためには、予め地上から見える天体の運動を記した「航海暦」や「航空暦」と呼ばれる星表が不可欠でした。コロンブスが大西洋を渡った15世紀以来、天文学はこうした航海術のための学問でもあったのです。
 天文航法が確立するまで人類は長い間、島伝い、陸地伝いへと船を走らせる地文航法で航海をしました。天文航法も緯度航法から経度航法へと発展したのですが、電波が登場すると電波航法(ロラン航法)が開発され、天体の光に代わって、地上のロラン基地からの電波を受信して位置を測定するようになります。
 カーナビは、複数の衛星からの電波を受信することで位置を測定します。GPS(Global Positioning System)「全地球測位システム」と呼ばれるこの衛星は、アメリカが軍事用に運用してきたものですが、今では星に代わるおよそ30個のGPS衛星が約2万kmの高度を一周約12時間で回っています。
 江戸時代から明治時代へと、鎖国政策から開国に踏み切った日本でも、海軍の水路部という組織が「航海暦」を編纂していました。戦後は海上保安庁に引き継がれ、いまでもその史料館には当時の資料が残されています。
 ときには、歴史資料が眠る史料館に足を運び、タイムマシーンに乗った気分を味わってみるもの楽しいものです。
歴史の中で、科学や技術の発達を促してきた力は何だったのか。これからの時代、何をすれば、人々が求める科学や技術を手にすることができるのか。一緒に考えて見ませんか。

 

 
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