【研究テーマ】持続可能な社会に関する諸言説,移行戦略,政治過程の比較

山梨大学 生命環境学部 地域社会システム学科
准教授 金 基成
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 環境政治学  - 人と自然の共生を夢見る人のための政治学 -
 
地域社会システム学科  金 基成(きむきそん)
 
 私の専門分野は政治学,その中でも環境政治という新しい分野です。環境政治は環境問題と政治の関係を究明する目的で1970年代から欧米の政治学界を中心に研究が行われ始めましたが,今は世界的に広がり,政治学カリキュラムの重要科目として定着するようになりました。
 Environmental Politicsという世界的に権威のある英文雑誌の編集方針によれば,環境政治学の研究は4つのテーマを中心に行われています。第1に,環境運動や緑の党などのように,エコロジー的価値と生活の質の向上を目指す新しい社会運動及び政党政治について研究します。第2に,環境問題と密接な関係のある公共政策のローカル・ナショナル・グローバルレベルにおける形成及び遂行過程について研究します。第3に,人間と自然の関係,持続可能な発展のあり方,持続可能な社会への移行戦略に関する様々な考え方を比較分析します。第4に,気候変動,森林破壊,低炭素社会など,地球環境に関するイシューと政治について研究します。
 私は主に政治理論と比較政治論の観点から人と自然が共生する持続可能な社会のあり方と移行戦略について研究しています。最近は欧州連合の気候変動政策のストーリーラインを批判的に分析する研究を進めてきました。欧州連合は温室効果ガス排出の総量規制と経済的手法を組み合わせた気候及びエネルギー政策パッケージを導入し,二酸化炭素の排出量を減らしながらも経済的に発展する低炭素経済への移行を促しています。文献研究や現地調査の結果,欧州連合の積極的な気候変動政策の背景には,環境への投資は経済的にも利益になるという考え方,すなわちエコロジー的近代化という政策言説が存在することが分かりました。欧州では早くからこのような考え方が定着しており,それ故に政府や産業界も積極的な気候変動政策を押し進めることが可能だったと言えます。
 一方で,同じ気候変動政策と言っても,国ごとにその対応の仕方や政策の強度は異なります。例えば,米国や日本の場合は欧州連合ほど気候変動問題に積極的ではありません。私はこのような相違点にこそ,人間と地球に優しい政治経済システムへの転換を促すためのヒントが隠されているのではないかと考えています。それを究明すべく,前述したような政策言説の分析を踏まえつつ,広い意味での政治的プロセス,例えば,世論,政治制度,市民運動,政党政治,利益集約の構造,政策決定過程などの特徴に着目した研究を進めています。このような研究を積み重ねていけば,持続可能な社会への転換を促したり妨げたりする諸要因を突き止めることができるのではないかと考えています。
 人と人,人と自然が共生する社会のための政治学,皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか?
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